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青森地方裁判所 昭和38年(ワ)242号 判決 1965年10月09日

主文

原告の主たる請求および予備的請求はいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主たる請求の趣旨として「原告と被告らとの間において原告が別紙第一目録記載土地(以下本件土地という)につき使用収益権を有することを確定する。被告会社は別紙第二目録記載(一)の建物(以下本件(一)の建物という)を収去し、被告藤川富久は別紙目録記載(二)の建物(以下、本件(二)の建物という)を収去し、被告早川広俊は別紙目録記載(三)の建物(以下、本件(三)の建物という)を収去し、各その敷地である別紙第三目録記載土地(会社につき(一)、藤川につき(二)、早川につき(三)記載)の明渡をせよ。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決および右収去明渡につき仮執行の宣言を求め、予備的請求の趣旨として、「原告が、別紙第四目録記載土地の範囲内に二十九坪四合の使用収益権を有することを確定する。被告らは原告に対し右二十九坪四合につき分割手続をせよ」との判決を求め、その請求の原因として、

一、訴外樋口喜一郎は、青森市大字浦町字橋本一三一番九、宅地一六九坪(以下、従前の土地という。別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、イ各点を直線で結んだ範囲。)を所有していたところ、昭和二十四年五月二十三日特別都市計画法に基く土地区画整理として百二十坪五合(別紙図面ロ、ハ、ニ、ホ、へ、ト、チ、リ、ワ、カ、ヨ、タ、ロ各点を直線で結んだ範囲。)が仮換地として指定され、その旨通知は同年十月十一日喜一郎に送達された。

二、喜一郎昭和二十八年十月二十日文筆のうえ売却するにあたり、従前の土地を、そのうち十四坪五合一勺を一三一番一〇(以下、A地という)、四十六坪七合五勺を同番の十一(以下B地という)に分筆し、いずれも被告藤川に、前者は同月二十日、後者を同年十一月一日売渡し、更に昭和三十三年一月九日残地のうち六十三坪を同番の十二(以下、C地という)、同年十一月十三日三坪五合を同番の十三(以下D地という)に分筆、同年十二月十一日右二筆を高木ミサオに、同人は昭和三十四年五月十三日これを被告会社に各売渡し、残余の四十一坪二合四勺(以下E地という)を昭和三十四年九月二十五日釜萢に売渡し、同人はこれを昭和三十五年二月十一日原告に代物弁済として所有権を譲渡した。

三、右のように、喜一郎は、従前の土地の坪数を標準として分筆各売渡をしたのであるから、仮換地の結果、A地は十坪三合七勺、B地は三十三坪六合、C地は四十四坪七合四勺、D地は二坪三合八勺、F地は二十九坪四合となる。よつて、A地は別紙図面のホ、ヘ、ル、ソ、ホ各点を順次直線で結んだ範囲、B地は別紙図面ハ、ニ、ホ、ソ、レ、ハ各点を順次直線で結んだ範囲、C地は別紙図面ヘ、ト、チ、オ、ツ、ネ、ヘ各点を順次直線で結んだ範囲、D地は別紙図面オ、ル、ネ、ツ、オ各点を順次直線で結んだ範囲の各土地部分となるし、E地は別紙図面ロ、ハ、レ、ソ、ル、オ、チ、リ、ワ、カ、ヨ、タ、ロ各点を順次直線で結んだ範囲の土地部分であつて、即ち本件土地にあたり、この部分が原告が所有権を取得した従前の土地のうち四十一坪二合四勺に対応して仮換地指定地につき原告において使用収益権を有する土地部分なのである。然るに、被告らは、原告の右本件土地上の使用収益権を否定して争うので、これが権利を有することの確認を求め(なお、A、B地は被告藤川が、C、D地は被告会社が使用収益権をもつ)、併せて、本件土地上に被告会社は本件(一)の建物(別紙図面中赤斜線に甲と表示して赤斜線を施した部分)を、被告藤川は本件(二)の建物(同図面中赤斜線に乙と表示の部分)を、被告早川は本件(三)の建物(同図面中赤斜線に丙と表示の部分)を、各原告に対抗し得る権原なく所有して不法に本件土地を占有しているからこれが収去明渡を求め、予備的に、仮換地指定地上に原告が有する使用収益権の割合の確認と分割手続を求めるため本訴に及んだ。

と述べ、

被告会社の主張に対し、

一、被告会社の主張は争う。ことに、金銭清算がなされることに決定していたこと、そのことを知つて原告が従前の土地につき所有権を取得したことは否認する。被告会社主張の金銭清算の金員は従前の土地および仮換地百二十坪五合全部に対するそれでありかつ金銭清算なるものは最終の清算段階においてはじめて土地所有者が同意するものであるから、仮に右のような決意があつたとしても原告に対しては効力がない。

二、被告会社の主張する、樋口喜一郎が金銭補償の同意をしたことにより原告もその拘束をうける趣旨の主張は次のとおり理由がない。即ち、

(一)  本件従前の土地の位置は青森市の旧国道に面していたところ、同市の特別都市計画の換地計画決定により、右国道幅員拡張のため仮換地指定処分があり、それは右国道に面した部分四十八坪五合を除く同一場所に仮換地指定がなされたのである。

このことは、旧国道に面する他の土地についても同様で、その減歩率、仮換地の地目、地積、等位等によつて均衡を保持するよう施行され、本件従前の土地についても他の土地の関係で著しい不均衡はないことからも、本件従前の土地全体につき仮換地指定処分があつたものであること明らかである。従つて、被告会社のいう、清算金なるものは、減歩に相応する清算金であつて仮換地を定めないことによる清算金ではない。

そして、原告は従前の土地の一部につき所有権移転をうけたのであるから、従前の土地の分割売買に照応して仮換地予定地上に、各分割の位置、地積がそのまま縮小、嵌入されるべく、当然その部分につき使用収益をなす権利があり、これが権利の主張を当然になし得るものである。

(二)  のみならず、清算金なるものは、換地処分が完成した結果として整理施行の終了後に発生するもので、整理施行地に存する権利義務ではなく、従前の土地の所有権の移転によりその承継人に移転するものではない。換言すれば、清算金は従前の土地所有者のみに属する権利義務であつて、清算金完済前に従前の土地を譲渡してしまつても、旧所有者は清算金に関する権利義務を失わない。この関係は土地区画整理法第十二条(旧耕地整理法第五条)の規定が換地には関係ない旨の最高裁判所判例からも、推認し得る。

と述べた。

証拠(省略)

被告会社訴訟代理人は、「請求棄却、訴訟費用は原告負担」との判決を求め、答弁として、

一、請求の原因第一項は、青森市に特別都市計画法に基く都市計画整理事業が施行されたことは認めるが、その余は不知、ただし従前の土地に対し百二十坪五合が仮換地指定されたとの点は争う、第二項中被告会社が高木ミサオから原告主張の日、C地とD地とを買い受けたことは認めるが、その余は不知、第三項は争う。

二、従前の土地から百二十坪五合(仮換地土地)をさしひいた四十八坪五合の土地部分に対しては、仮換地の指定なく、すでに原告が所有権を取得したと主張する以前において金銭清算がなされることに決定している。即ち、本件従前の土地一六九坪から、仮換地面積である百二十坪五合をさしひいた四十八坪五合(後記分筆異動届出が喜一郎から提出された後である昭和三十四年九月二十九日に同人から釜萢喜助に売渡され、更に昭和三十五年二月十日、同人から原告に所有権移転があつた部分である)については、昭和三十四年九月十四日に、喜一郎から区画整理事業施行者たる青森県知事に宛て「右四十八坪五合については仮換地の指定をうけなくてもよい。金銭で清算したい」旨仮換地指定の範囲外とする趣旨の図面を添付して分筆異動届が提出され、受理され、右趣旨に沿い、金銭清算の決定がなされている。右届出によつて、すくなくとも仮換地の指定をしないことに土地所有者の同意があつたものというべく、右区画整理事業施行者においても仮換地が零として処理している。その間の経緯は、従前の土地に対し百二十坪五合の仮換地指定がなされ、従前の土地は原告主張の経過で分筆されたことではある。なお、清算金額は百八万九千三百円である。故に、土地区画整理法九十条、十二条により、原告が主張するE地につき使用収益権を取得することはない。原告の本訴請求は仮換地の指定が原告主張のとおりであるというに帰し、行政処分の変更を求めるもので、許されない。けだし、仮換地の変更を求めないで本訴請求をするのは一方において清算金受領の権利を取得し乍ら更に仮換地の指定をうけたと同様の利益を享受しようとするもので、不当である。なお、原告主張どおりとすれば、表通りの土地(原告主張Eの土地部分)は裏手の土地部分より価格が高いことを考えても、同一割合での減少するというのは不公平というべきであるし、被告会社の所有地は全くの袋地となるのであつて、そのような結果をきたす換地はあり得ない。なお、原告は右金銭清算の決定の事実を知つて仮換地指定のない部分を買いうけたのである。

と述べた。

証拠(省略)

被告藤川、同早川両名訴訟代理人は、「請求棄却、訴訟費用は原告の負担」との判決を求め、答弁として、

一、請求の原因第一項は、喜一郎が原告主張の従前の土地を所有していたことは認めるが、その余は不知、第二項はA地とB地を被告藤川において喜一郎から買受けたことは認めるが、その余は不知、第三項は争う。もつとも被告藤川、同早川が本件(二)、(三)の建物を各、約二分の一づつ所有していることは認める。

二、しかして、被告会社の主張をすべて援用する。

と述べ、「証拠の提出、認否、援用は被告会社のそれと同様である。」と答えた。

理由

一、被告会社が高木ミサオから、原告主張の日C地、D地所有権を売買により取得したことは原告と被告会社との間に争がなく、被告藤川が喜一郎からA地、B地所有権を売買により取得したことは原告と被告藤川、被告早川との間に争がない。

二、原告は、「喜一郎が、従前の土地のうちA、B、C、D地を各分筆売却した残地であるE地を、昭和三十四年九月二十五日釜萢において喜一郎から買受、所有権を取得し、更にこれを昭和三十五年二月十一日代物弁済によつて原告が釜萢から所有権移転をうけたところ、従前の土地(一六九坪)に対し百二十坪五合即ち別添図面ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トチ、リ、ワ、カ、ヨ、タ、ロ各点を直線で結んだ範囲が仮換地として指定された」と主張し、これを前提に、主たる請求として、E地は即ち本件土地四十一坪二合四勺に該当するから本件土地の原告の使用収益権と本件建物収去、本件土地明渡を、予備的請求として、別紙第四目録記載土地の範囲内に二十九坪四合の使用収益権の存在することの確定と被告らに対する分割手続を求める。

然し乍ら、当事者間に成立に争のない乙第一号証の一ないし三によるときは、原告が、一三一番の九、宅地四十一坪二合四勺(即ちE地)を売買により所有権取得する前である昭和三十四年九月十四日、すでに当時の所有者樋口喜一郎から、土地分筆異動届がなされ、同土地については換地々積はないこととして同届書が同日青森県計画課により受理されていることを認め得ることと、証人山本和夫の証言によれば、前所有者樋口喜一郎から右E地部分は金銭清算とする旨の同意書が提出されていること、原告会社からも従つて同意書を提出してほしいとして同意書の書類(甲第十二号証の一、二、三)が青森県庁から送付されてきたこと(もつとも同証人は青森県計画課において、喜一郎が提出したという同意書を現認するには至らなかつたが)を窺い知り得ることを斟酌すれば、原告が買いうけた土地E地について結局、昭和三十四年九月十四日当時のE地所有者樋口喜一郎が換地の交付を受けないで金銭清算することに同意したものと解するのが相当であつて、この効果は、さきに仮換地指定処分がなされていたとしても妨げられるものではなくかつこれにより新たな仮換地の指定をすることは必要でないと解するのが相当である。成立に争のない甲第十五号証の一、同十七号証も右認定を妨げるものではなく、他に右と別異に解し、E地に対応する仮換地指定地が原告主張部分にもしくは原告主張土地範囲内に存在すると解すべきとする十分な証拠はなく、証人山本和夫の証言も原告主張を肯認するに至らない。そして、喜一郎の右同意による効果は、その後E地所有権を取得したとする原告においてもこれを否定することはできない筋合であるので、原告が、本件土地につき使用収益権を有することを前提に、これが権利存在の確定等を求める本件主たる請求および、第四目録記載土地範囲内に使用収益権を有することの確定と分割手続を求める予備的請求は、爾余の点につき判断するまでもなく失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

別紙

第一目録

青森市大字浦町字橋本一三一番の九

宅地 四十一坪二合四勺

(ただしその範囲は仮換地土地の一部である別紙添付図面ロ、ハ、レ、ソ、ル、オ、チ、リ、ワ、カ、ヨ、タ、ロ各点を順次結んだ二十九坪四合の部分)

第二目録

(一) 青森市大字浦町字橋本一三一番地一二、一三

陸屋根鉄筋コンクリート造三階建事務所 一棟

延坪一三〇坪一合三勺七のうち別添図面ワ、オ、チ、リ、ワ、各点を順次結んだ範囲内の十八坪一合の一、二、三階(別添図面に甲と記載し赤斜線を施した部分)

(二) 青森市大字浦町字橋本一三一番地一〇、一一

木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建店舗兼居宅 一棟

建坪 四十九坪二合九勺

二階 四十七坪六勺のうち別添図面ロ、ハ、レ、ソ、ル、カ、ヨ、タ、ロ各点を順次結んだ範囲内の十六坪五合九勺の階下(別添図面乙と表示し赤斜線を施した部分)

(三) 前(二)と同所同番同号(家屋番号同字八番の四)

木造木羽葺二階建店舗兼居宅 一棟

建坪 七坪

二階 七坪(別添図面丙と表示し赤斜線を施した部分)

第三目録

(一) 青森市大字浦町字橋本一三一番の一二

宅地 六十三坪

同所同番の一三

宅地 三坪五合

(二) 青森市大字浦町字橋本一三一番の一〇

宅地 一四坪五合一勺

同所同番の一一

宅地 四六坪七合五勺

(三) 青森市大字浦町字橋本一三一番一〇、一二、一三の土地

<省略>

第四目録

青森市大字浦町字橋本一三一番九

宅地百二十坪五合(昭和二十四年五月二十三日特別都市計画法に基き従前の同所同番九宅地一六九坪の仮換地として指定された土地で、別紙添付図面ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ワ、カ、ヨ、タ、ロ各点を直線で結んだ範囲)

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